所蔵資料紹介 Vol.1 富山県滑川町鳥瞰図絵
Vol.1 富山県滑川町鳥瞰図絵
この資料は昭和11~12年の滑川町を描いた鳥瞰図です。大胆にデフォルメされた独特の描かれ方が特徴で、実際には滑川から見ることのできない新潟や佐渡島、さらには山口県の下関まで描き込まれています。この手法は「初三郎式鳥瞰図」と呼ばれており、吉田初三郎(明治17年・1884~昭和30年・1955)という人物が生み出しました。この絵は観光図・名所図としての性格を持ち、大正から昭和にかけて各地の自治体や鉄道会社などがアピールのためこぞって採用します。
この鳥瞰図は折本形式の小冊子で、裏面には滑川町の概要や名所旧跡、当時「二大奇観」として売り出していたホタルイカ・蜃気楼などについての説明が記載されています。滑川薬業学校が隣接した田中小学校が現在地に描かれ(昭和11年以降)、裏面には昭和12年に十二銀行と合併した滑川銀行が紹介されていることから、昭和11~12年頃の滑川町が描かれていることがわかります。また、昭和11年には富山市で日満産業大博覧会(日満博)が開催されており、これに合わせて氷見町・魚津町・高岡市・東岩瀬町などが鳥瞰図を作っています。このことから滑川町の鳥瞰図も日満博に合わせて作られた可能性が指摘できます。
下の画像は町の中心部の拡大です。荒町に町役場があり、常盤町の遊郭も描かれているなど、昭和戦前期の滑川の街並みをうかがうことができる資料です。
富山県滑川町鳥瞰図絵(部分) (JPEG: 300.0KB)
作者は吉田外二郎という人物です。吉田初三郎の弟子だったのかもしれませんが、この時代の「初三郎式鳥瞰図」絵師の一人ということ以外、くわしいことはわかっていません。今回紹介した資料は印刷物ですので、原画が存在したはずですが、現存しているかどうかは不明です。
(文責:学芸員 近藤浩二 2009年1月6日)
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更新日:2018年02月08日